フィリピンの課題

台風が、貧困を毎年つくり直す

貧困層ほど災害に弱い場所に住み、失うと元に戻しにくい状況にあります。気候変動は台風の数より強さと雨量を変え、その「引き戻される構造」を強めているかもしれません。

防災・災害復興 最終更新 2026年10月9日

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世界で最も災害のリスクが高い国

フィリピンは、災害リスクの国際指標「WorldRiskIndex」で、2025年も193か国中1位でした。21年連続の1位です。[1]

この指標は、台風や地震にどれだけさらされるかだけでなく、貧困や格差など「被害を受けたときの弱さ」も合わせて測っています。1位という結果は、自然の厳しさと貧しさが同じ場所で重なっていることを表しているのかもしれません。

台風の数で言えば、フィリピンの監視区域には平均で年19〜20個の台風が入り、そのうち8〜9個が上陸・通過します。[2]

なぜ、貧しい人ほど被害を受けるのか

  • 安い土地は、低地・海沿い・急斜面など、危険の大きい場所にあることが多いです。
  • 家のつくりが簡素で、風や水の被害で失われやすいです。
  • 保険や貯蓄がなく、失ったものを取り戻しにくいです。
  • 農業や漁業で暮らしていると、収入源そのものが流されてしまいます。

その結果、少しずつ貯めたものが数年おきにゼロに戻ってしまいます。貧困から抜け出す途中で、何度も引き戻される構造があると考えられます。

2013年の台風ハイエン(ヨランダ)

この構造が大きな形で現れたのが、2013年11月の台風ハイエン(フィリピン名ヨランダ)でした。

政府の被害評価では、死者6,268人、被災者は約1,600万人、避難した人は約400万人、損壊した住宅は110万戸を超えました。[3]

最も被害が大きかったイースタン・ビサヤ地方は、台風の前から国内で2番目に貧しい地域でした。[4] もともと貧しい場所が、いちばん強い被害を受けたことになります。

気候変動で、何が変わるのか

台風の「数」が増えるかどうかは、まだ分かっていません。 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、世界全体の台風の発生数の変化について「確信度が低い」としています。[5]

一方で、強さと雨は変わるとされています。温暖化が進むほど、最も強いクラス(カテゴリー4〜5)の台風の割合が増え、台風がもたらす雨量も増える見込みです。こちらは確信度が高いとされています。[5]

実際の例もあります。2024年10〜11月、フィリピンは30日のあいだに6つの台風に見舞われました。国際的な研究グループ World Weather Attribution の分析では、この連続発生を生んだ高い海面水温などの条件は、人間による温暖化で約2倍起きやすくなっていました。強い台風が上陸する確率も、温暖化のない世界より約25%高くなっていたとされています。[6]

世界銀行は、台風による損失を平均で毎年GDPの約1.2%と見積もっています。対策をしなければ、気候変動による損失は2030年にGDPの7.6%、2040年には13.6%に達しうるとし、最も影響を受けるのは最も貧しい世帯だとしています。[7]

気候変動は、まったく新しい問題を持ち込むというより、すでにある「引き戻される構造」を強めるものなのかもしれません。台風が強く、雨が多くなるほど、貯めたものがゼロに戻る回数と深さが増えていくおそれがあります。

支援の側から見ると

災害の直後には、注目と資金が集まりやすいです。一方で、その後の生活の立て直しや、次の災害への備えはニュースになりにくく、資金が続きにくいと言われています。長く活動を続けている団体は、この差を埋める役割を担っているのかもしれません。

気候変動が進むほど、「次に備える」支援の大切さは増していくと考えられます。高台への移転、強い家の建て方、作物や漁の多様化、災害のあとすぐ届く現金給付の仕組みなど、どれも目立ちにくい取り組みです。

寄付のタイミングとしては、災害の報道が少ない時期の継続的な寄付も、大きな助けになるかもしれません。

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